
日本で生まれ育ち、日本の学校を卒業し、日本の会社で働いている。そんな人が、ある日突然、「あなたはアメリカへの税務申告をしていませんでした」と言われたら、どう思うだろうか。しかし、これは決して珍しい話ではない。親のどちらかがアメリカ国籍だった。あるいは、親の駐在中にアメリカで生まれた。ただそれだけの理由で、一度もアメリカで働いたことがなくても、アメリカの税務申告義務を負うことがある。 赤信号を渡ってはいけないというルールなら誰でも知っている。教科書で習わなくても分かる。信号が赤に変わり、車が止まり、周囲の人が足を止める。その光景を何度も目にするうちに、そこにルールがあることを自然に理解する。しかし、アメリカへの申告義務には、そうした「見える信号」がない。赤くもならないし、誰も立ち止まらない。日本で普通に生活している限り、その義務は何十年経っても一度も姿を現さないことがある。 ところがある日、銀行での手続きやニュース記事、あるいは知人との会話をきっかけに、初めて「そんな決まりがあったのか」と知る。そして多くの場合、それは義務が発生してからかなり時間が経った後だ。こうした場面で必ず出てくるのが、reasonable cause(正当な理由)という言葉である。 「知らなかったのだから仕方ない」と言いたくなるが、税務の世界では単に法律を知らなかったというだけでは、原則として reasonable cause にはならない。もっとも、実際の判断はそれほど単純ではない。どのような環境で暮らしていたのか、義務を知る機会があったのか、知った後にどう対応したのか。そうした事情も含めて総合的に評価される。 なぜ今、この言葉が重みを増しているのか 近年、日本の金融機関が収集した口座情報は、FATCAの枠組みの下で日米当局間に共有される仕組みとして定着し、その情報の照合も以前より自動化が進んでいる。情報は以前より自動的に伝わるようになり、判定は機械的になりつつある。一方で、救済の基準はむしろ見えにくくなっている。その結果として、reasonable cause という言葉の重要性は以前にも増して高まっているように見える。 それでも、「知らなかった」としか言えない 普通の人にとって、それ以外に何があるのだろう。現実には、「ただ知らなかった」以外に説明のしようがない人も少なくないだろう。日本で生まれ育ち、日本の社会の中で暮らしてきた。アメリカで働いたこともなければ、税務当局から案内を受けたこともない。そのような人にとって、申告しなかった理由を正直に説明すれば、結局は「知らなかった」に行き着く。 「知らなかった」を選べる場所もある FBAR(海外金融口座報告)の遅延提出では、この問題をより身近な形で見ることができる。提出理由を説明する欄があり、そこでは実際に「知らなかった」という趣旨の理由を選択することもできる。もちろん、それを選んだからといって自動的に救済が認められるかどうかはわからない。しかし少なくとも制度を運用する側も、「義務を知らなかった」という状況が現実に起こり得ること自体は前提としている。 考えてみれば、不思議な話でもある。 義務を課している側は、その義務の存在を積極的に知らせているわけではない。出生証明書を発行する病院も、パスポート取得時も、日本で暮らしている限り、この義務を教えてくれる案内に接する機会もほとんどない。それでも、原則として知らなかったことの責任は本人が負うことになる。それはまるで、信号機も標識もない交差点を歩いていた人に対して、後になって「そこには守るべき規則があった」と告げるようなものに見える。 reasonable cause が本来向き合うべきもの reasonable cause という制度は、本来、そのような事情を考慮するための制度のはずである。普通に生活していただけの人が、ある日突然、自分はなぜ申告をしてこなかったのかを説明しなければならなくなる。そして、その説明の内容が結果を左右することもある。 「知らなかった」だけでは足りない。しかし、多くの人にとっては、それが最も正直な説明でもある。その現実こそが、reasonable cause をめぐる難しさなのかもしれない。

アメリカの国土安全保障省(DHS)が、F-1学生などの在留資格管理を見直すFinal Ruleを公表した。これまでF-1学生は、原則として「Duration of Status(D/S)」、つまり学生としての資格を維持している期間について在留できる仕組みだった。これが、原則としてプログラムの長さを基礎とした固定された在留期間に変わり、期間を超えて滞在する場合には延長などの手続きが必要になる。 ここで注意したいのは、移民法上の在留資格と、税務上の居住者判定は別の問題だということである。 F-1ビザは、税金を免除する制度ではない。F-1学生について特別な扱いがあるのは、主としてSubstantial Presence Testにおける米国滞在日数の計算である。 たとえば大学内でのアルバイトによる給与は、F-1だから米国税がかからないということではない。米国源泉所得については通常どおり課税関係が生じ、必要に応じてForm 1040-NRなどを提出することになる。 特例は「5年ルール」 F-1学生は、一定の要件を満たす限り、最初の5暦年について、米国滞在日数をSubstantial Presence Testの計算から除外できる。多くの場合、この期間は米国の税務上の非居住者として扱われる。 重要なのは、この「5年」が「今回の留学から5年間」という意味ではないことである。過去に何暦年、F-1などのstudentとして米国滞在日数を除外したかが問題になる。過去のF-1によるexempt yearsは、新しいF-1を取得したからといってリセットされない。 たとえば大学留学で2年間アメリカに滞在し、その後日本へ帰国したとする。そして数年後、大学院へ進学するため再びF-1で渡米した場合、本人にとっては新しい留学でも、税務上は最初の2暦年をすでに使っている。新しいF-1によって5年の時計がゼロに戻るわけではない。 この点を知らないまま再渡米すると、「まだF-1だから税務上は非居住者」と考えていたところ、実際には5暦年のexemptionを使い切っており、Substantial Presence Testによって米国居住者となる可能性がある。 税務上の居住者になると、原則として全世界所得が米国の課税対象となる。これまで意識していなかった日本の預金利息、日本株の配当や譲渡益などが、米国の所得税申告に登場してくる。また、FBARやForm 8938などの情報申告も問題になる。 今回のDHSの制度変更は移民法上の在留期間管理の話だ。しかし税務の視点から見ると、移民法上の手続きが新しく始まっても、税務上の「5年ルール」がリセットされるわけではない。移民法上の在留期間と、米国税務上の居住者判定。この二つは別々の時計で動いている。

2026年9月9日、トランプ大統領が「Trump Dividend」と呼ぶ5,000ドルの給付構想を発表した。内容は、2026年11月の中間選挙で共和党が上下両院を維持した場合、すべての成人の米国市民(adult U.S. citizens)に5,000ドルを支給するというものである。ただし、これはまだ成立した制度ではない。支給方法や所得制限、財源、そしてCongressによる立法も決まっていない。成人約2億4,000万人を対象とすれば、総額は1兆ドルを大きく超えるとされている。 それでも、日本に住む米国市民やGreen Card holderにとっては、税務上興味深い問題である。 日本に住む米国市民も対象になるのか 現在公表されている説明で重要なのは、「adult U.S. citizens」という表現である。ここには、少なくとも現在の発表上、「米国居住者に限る」という条件は明記されていない。したがって、最終的な法律がこの資格要件をそのまま採用するのであれば、日本に住んでいる米国市民も対象になる可能性がある。日本に住み、米国にはほとんど行かない米国市民であっても、「海外居住だから対象外」とは現在の発表からは判断できない。最終法案で居住地要件が追加されれば話は変わる。 Green Card holderはどうか ここは米国市民とは区別する必要がある。Green Card holderは、米国税法上resident alienとなり、米国市民と同様に1040を提出するなど、広範な米国税務上の義務を負う。しかし、今回のTrump Dividendは現在のところ「adult U.S. citizens」を対象としているため、Green Card holderが対象になるかははっきりしない。 「Dividend」だから配当所得? 税務上もう一つ注意したいのが、「Dividend」という名前である。株式の配当であればdividend incomeだが、今回の5,000ドルは政府からの給付である。したがって、Trump Dividendという名称だけで配当所得になるわけではない。米国で課税されるかどうかは、最終的に議会がどのような法律を作るかによって決まる。 日本ではどうなるのか 日本に住んでいる米国市民にとっては、さらに日本の所得税が問題になる。仮に5,000ドルを米国の所得税上非課税としたとしても、日本でも自動的に非課税になるわけではない。 日本の居住者については、日本の所得税法に基づいて、 * 非課税所得なのか * 一時所得なのか * 雑所得などになるのか を別途判断する必要がある。米国で非課税になったから、日本でも非課税とは考えない方がよい。 所得の再分配 ところで、この5,000ドルの財源は関税収入だと説明されている。関税を法律上支払うのは輸入業者だが、その負担は価格上昇を通じて米国の消費者や企業にも転嫁される。つまり、「関税で政府が集めたお金を国民に配る」というのは、政府が新たに5,000ドルを生み出すという話ではなく集めたお金を国民に再分配する仕組みともいえる。 その意味では、「右手で関税を取り、左手で5,000ドルを配る」という見方もできなくはない。ただし、関税をどれだけ負担するかと、5,000ドルを誰が受け取るかは同じではない。関税をほとんど負担しない人が5,000ドルを受け取ることもあり得るため、実際には所得の再分配という側面を持つ。 そして、日本に住んでいる米国市民まで対象になるとすれば、さらに興味深い。日本で生活している人が米国の関税による価格上昇をほとんど負担していないにもかかわらず、米国政府から5,000ドルを受け取る可能性があるからである。 そもそも、この5,000ドル給付はまだ存在する制度ではない。トランプ大統領が、2026年中間選挙で共和党が上下両院を維持した場合の政策構想として示しているものである。したがって、選挙結果によっては、この話自体が実現に向けて進まない可能性がある。

米国税務に関わる人が戸惑う制度の一つが、FBARとFATCA(Form 8938)である。どちらも海外の銀行口座や金融資産を報告する制度であり、日本在住の米国市民やグリーンカードホルダーにとっては身近な届出である。しかし、実際に計算方法を見ていくと、「なぜそうなるのか」と首をかしげたくなる場面が少なくない。 典型例が「最高残高」と「為替レート」の扱いである。 多くの人は、口座の最高残高をドル換算するのであれば、「最高残高が発生した日の為替レート」を使うのが自然だと考える。例えば、年内のある日に普通預金残高が3,000万円となり、それが年間最高だったとする。その日のドル円レートが1ドル150円であれば20万ドル、100円であれば30万ドルになる。経済的な実態を考えれば、このような計算をするだろう。 ところがFBARはそうした考え方を採らない。 FBARでは、まず年間の最高残高を現地通貨で求め、その金額を年末時点の指定レートでドル換算する。つまり、最高残高が1月に発生していても、9月に発生していても、ドル換算には12月31日のレートを使用する。 最高残高の日と最も円高の日を組み合わせればもっと大きなドル金額になるかもしれないし、その逆もあり得る。しかしFBARはそうした現実の市場価値を追求しない。違和感があるが、「正確な時価評価」よりも「統一された事務処理」を重視した制度と理解した方がわかりやすい。 この違和感は、グリーンカード放棄の年になるとさらに強くなる。 例えば3月31日にグリーンカードを放棄した場合、多くの人は「1月1日から3月31日までの最高残高を計算し、その時点のレートで換算するのだろう」と考える。しかしFBARはそのような発想で設計された制度ではない。報告対象となる口座や残高は米国人であった期間を基準に考える一方、ドル換算では年末レートが用いられる。そのため、3月31日にグリーンカードを放棄した人であっても、計算上は12月31日の為替レートが登場することになり、違和感を覚えるかもしれない。 ところが、同じ海外口座報告であるForm 8938になると話が変わる。 Form 8938は所得税申告書の一部であり、FBARとは制度目的が異なる。そのため、「その人がいつSpecified Individualだったか」という税務上の地位が重要になる。グリーンカード保有者であった期間、米国税務上の居住者であった期間という考え方が前面に出てくる。 資産評価についても、FBARのように全員が同じ年末レートで機械的に換算する制度ではない。Form 8938は税務申告の一部として資産情報を把握する仕組みであり、FBARとはそもそもの発想が異なる。 結局のところ、この差は制度目的の違いから生じている。 FBARは金融犯罪対策や情報収集を目的とした報告制度であり、「全員同じやり方で報告させること」が重視される。一方でForm 8938にはFBARのような統一的な換算ルールは設けられておらず、資産価額を税務上報告するという発想が重視されている。このため、両者の金額が一致しないことは珍しくない。 「どちらも海外口座報告なのだから同じ数字になるはずだ」と考えてしまいがちだ。しかし、FBARで計算した金額をそのままForm 8938へ持っていけるとは限らない。もっとも、納税者から見ればほぼ同じような情報を二度報告することになる。制度目的が異なるとはいえ、その手間や負担に疑問を感じる人も多いだろう。FBARとForm 8938を一本化すべきだという議論は以前から存在するが、現在に至るまで両制度は並行して存続している。

米国籍やグリーンカードを保持したまま日本で暮らしていると、米国の税制や報告義務には、わかりにくいものがある。その代表例の一つが、FBAR(海外金融口座報告)における資金移動の扱いだ。単に「報告の数字が増えてどうするのか」という話にとどまらない。「実質的には1万ドルの基準に達していないはずなのに、資金を移動させた結果、FBARの提出義務が発生する」という実務上の問題につながるからだ。 「60万円」が180万円になるFBARの算数 具体例:手元に60万円の現金があり、これを都合により、A銀行からB銀行へ、さらにC銀行へと年内に順次移動させたとする。直感的には、12月31日時点では、 A銀行:0円 B銀行:0円 C銀行:60万円 であり、自分が持っているお金はどこまでいっても60万円である。 1ドル=150円とすれば約4,000ドルである。FBARは、国外金融口座の合計額が年間のいずれかの時点で1万ドルを超えた場合に提出義務が生じるため、「60万円なら1万ドル未満だから、FBARは必要ない」と考えるのは自然だ。 ところが、FBARの計算方法は少し違う。 まず、それぞれの口座について、その年の最高残高を確認する。そして複数の口座がある場合は、それぞれの最高残高を合計して、1万ドルの基準を判定する。 この例では、 A銀行の年間最高残高:60万円 B銀行の年間最高残高:60万円 C銀行の年間最高残高:60万円 となる。 したがって、FBARの提出義務を判定するための合計額は、60万円+60万円+60万円=180万円となる。1ドル=150円なら約12,000ドルであり、1万ドルを超える。 つまり、実際に所有しているお金が180万円になったわけではない。しかし、FBARの提出義務を判定するための計算上の合計額は180万円になる。ここが、素朴な感覚とは異なるところである。 なぜ「同じお金だから60万円」と考えてはいけないのか FBARでは、まず口座ごとに年間の最高残高を計算し、それを合計する。同じ60万円をA銀行からB銀行へ、さらにC銀行へ移動させたとしても、それぞれの口座で60万円が最高残高になっていれば、判定上は60万円を3口座分合計することになる。これは、「同じお金を3倍持っていた」と当局が認定するという意味ではない。あくまで、FBARの提出義務を判定するために、口座ごとの最高残高を合計するという事である。そのため、「同じお金を移動させただけだから、実質的には60万円しか持っていない」という説明は、資金の実態としては正しくても、FBARの提出義務を判断するうえでは決め手にならない。 では、資金を複数の銀行口座へ移動した結果、1万ドルを超える場合には、どう考えればよいのだろうか。 年末残高だけを見るのではなく、それぞれの口座の年間最高残高を確認して合計する。その合計額が1万ドルを超えるのであれば、FBARの提出義務があるものとして対応するのが安全である。この仕組みは、FBARが資金そのものを追跡しているわけではなく、それぞれの口座について年間の最高残高を計算し、それを合計する制度だ。したがって、資金を銀行間で移動させた場合には、「実際にはいくら持っていたか」だけではなく、「それぞれの口座で年間最高残高がいくらになったか」を見る必要がある。 FBARでは、資金をどこからどこへ移したかではなく、口座ごとの年間最高残高をルールどおり合計するのがシンプルで安全運転だ。

米国は、市民や長期居住者に対して世界中の所得を課税する国である。その一方で、株式や投資資産の値上がり益は、実際に売却するまで課税されない。 ところが、米国の出国税には少し不思議な仕組みがある。 たとえば、1,000万円で購入した株式が、市民権やグリーンカードを放棄する時点で3,000万円になっていたとする。本来であれば売却しない限り利益は確定しない。しかし出国税では、その株を売っていなくても2,000万円の利益が生じたものとして税金を計算する。 手元に現金はないのに税金だけが発生するため、このような含み益への課税は「幽霊利益への課税」と呼ばれることがある。 米国が幽霊利益に課税する理由 一般に、非居住者が得る株式等のキャピタルゲインには、米国で課税されないことが多い。 そのため、富裕層の中には、市民権やグリーンカードを放棄して非居住者となった後に資産を売却し、米国課税を回避するケースがあった。 米国政府から見ると、米国に住んでいた期間に生じた値上がり益であるにもかかわらず、その利益に課税できなくなってしまう。これを防ぐために導入されたのが「みなし譲渡課税」である。 covered expatriate(対象者) に該当する人については、出国日の前日に時価で財産を売却したものとみなして利益を計算する。つまり出国税とは、米国の課税権を守るための最後の精算制度なのである。 納税者にとっては厳しい制度 もっとも、この制度には大きな問題もある。最大の問題は、利益がまだ現金化されていないことである。株式や不動産の評価額が上昇していても、売却しない限り手元にお金は入らない。しかし税金だけは先に支払わなければならない。 非上場株式 事業の持分 流動性の低い不動産 長期間保有する予定の株式 などは負担が大きくなりやすい。 さらに、出国時に3,000万円として課税された株式が、その後1,000万円まで値下がりすることもある。その場合、実際には利益を得ていないにもかかわらず税金だけを支払ったことになる。 また、日本へ帰国した後にその株式を売却すると、日本でも課税される可能性があり、場合によっては二重課税の問題が生じることもある。 「合理的だが厳しい」──これが出国税 出国税は、米国の課税権を守るという意味では合理的な制度である。 納税資金を確保しなければならない 財産評価をめぐる争いが生じる 出国後の値下がりリスクを負う 国際的な二重課税の問題が起こり得る といった負担も納税者に課している。したがって、出国税は「不合理な制度」でも「完全に公平な制度」でもない。米国の課税権を守るという目的には合理性がある一方で、納税者には相当の負担を求める制度と理解するのが適切であろう。 まず確認すべきこと もっとも、幽霊利益への課税はすべての人に適用されるわけではない。対象となるのは、一定の条件を満たす covered expatriate(対象者) に限られる。 代表的な判定基準は次の三つである。 純資産が200万ドル以上であること(純資産基準) 過去5年間の平均所得税額が2026年では21.1万ドル以上であること(納税額基準) 過去5年間の税務申告を適正に行っていないこと(適正申告基準) 多くの日本人のグリーンカード保有者は、純資産基準や納税額基準には該当しないことが多い。しかし、過去5年間の申告が適正に行われていなかったために対象 と判定されるケースには注意が必要である。 毎年の申告と納税をきちんと行うことは、将来グリーンカードや市民権を離脱する可能性がある人にとって重要な準備の一つだ。 また、長期間米国外に居住しているグリーンカード保持者が米国へ入国する際、永住意思の欠如を理由としてグリーンカードの自主返納を求められるケースもある。税務上の影響を十分理解しないまま返納手続に応じてしまうと、思わぬ形で出国税の問題に直面する可能性もある。 幽霊利益への課税は、米国に住んでいた間に生じた値上がり益を課税の網から逃さないために設けられた制度である。制度の趣旨は理解できる。しかし、実際には売却していない財産に課税する以上、納税資金や値下がりリスクといった問題は避けられない。出国税を考える際に最も重要なのは、「幽霊利益がいくらあるか」ではなく、まず自分が covered expatriate (対象者)に該当するかどうかを確認することである。そこが、出発点になる。

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