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アメリカで商品を販売するような場合、日本の親会社がアメリカに卸売り子会社を作り、その子会社がさらに全米の販売会社に商品を卸す形をとることがあります。価格は最も重要な戦略項目の一つですが、いずれにしても、アメリカでの市場での価格競合性が問題になります。
アメリカに進出していく企業としては、市場での経験がないために、価格設定が難しく、なかなか高価格は設定できるものではありません。アメリカの消費者としても、今まで聞いた事もないような会社の製品を買うのですから、本当に買っていいのかと疑心暗鬼になるものです。従って、知名度もない外国の商品を購入する場合は、決して高価格なものはなかなか買いません。そして一度、使ってみてやっぱり良くなかったと思えば、安いものであるならば、あきらめもつくが、高いものは大きな損失になります。従い、総論としては価格が安く、品質も良いものでないと、アメリカのお客様に手にしてもらうことができないことになります。
そうした場合、市場での価格がアメリカ製品より安くなければ競合できません。日本の商品は日本の工場から出荷されてから、太平洋を渡り、関税がかけられ、保険がかけられ、為替リスクにさらされて幾多のコストアップ要素を抱えながら、アメリカの市場に出ることになります。こうした価格を可能ならしめるには、日本の工場から出荷された時点で、アメリカ向けの輸出価格が低く抑えられなければ実現できません。アメリカ側からみると、アメリカに入ってからの流通コスト、管理コスト等は、アメリカの会社でも日本の会社でも大差がないと考えます。そうすると、日本から出荷された段階で異常に低い価格でなければ、市場においてアメリカ製品よりも安い価格設定ができるわけがないと考えます。
アメリカの消費者からしてみれば、安くていいものであるならば、これほど良いことはないので、日本製品を買います。それが市場の勢力図を書き換え、アメリカのメーカーが工場を閉鎖せざるを得ないようになると、これはアメリカで失業を作り出しているわけですから、政治問題になっていくわけです。
アンチ・ダンピング関税制度
アンチ・ダンピング関税制度とは、正常価格(輸出国内の販売価格等)より低い輸出価格(ダンピング価格)で販売された貨物の輸入により、輸入国内でこの貨物と同種の貨物を生産する産業に損害等が生じる場合に、国内産業を保護するため、この輸入貨物に対して正常価格とダンピング価格の差額(ダンピング・マージン)の範囲内で割増関税を課す制度であり、世界の貿易自由化と貿易ルールの強化を目指すWTO(世界貿易機関)の協定でも、一定の規律の下に認められているものです。
アンチ・ダンピング関税の課税要件
アンチ・ダンピング関税の課税要件として、WTO協定の規定に基づき、以下となっています。
@ ダンピングされた貨物の輸入の事実があること(ダンピング輸入の事実)
A ダンピングされた貨物と同種の貨物を生産している国内産業(国内生産高の相当な割合を占める者)に実質的損害等の事実があること(損害等の事実)
B 実質的損害等がダンピングされた貨物の輸入によって引き起こされたという因果関係があること(因果関係)
C 国内産業を保護する必要性があること(産業保護の必要性)
ダンピングマージン
ダンピングとなった場合は、ダンピングマージンをなくするために、相殺関税がかけられます。
中でも大事なことは、その価格設定がアメリカの国内産業にダメージを与える(マーケットシェアが高くなり、価格をコントロールできる)産業の衰退をもたらすような状況であることが立証されなければいけません。ですから、アメリカ事業の初期段階で価格を低く販売しても、アメリカに実質的な損害を及ぼさない限り、ダンピングにはなりません。
いちど、商品が市場に出るようになると、価格は低くすることができても、高くするのは容易ではありません。
移転価格
上記とは反対に、日本の親会社がアメリカの子会社に対して、独立した第三者間でつけられる通常の価格よりも高く販売することがあります。市場での小売価格が一定の場合、アメリカの子会社の利益は低くなり、日本の親会社の利益は高くなります。これにより、アメリカとしては当然アメリカで発生したであろう収益が減少して、税収が少なくなります。
アメリカでの事業を行っている場合に、特に事業の初期段階では売り上げが少ないために、固定費をカバーできずに、利益が出ない時期が続くことがあります。こうした場合に、資金繰りができなくなりますので、日本の親会社がファイナンスを供与することになると、過小資本を利用して意図的にアメリカの利益を日本に移転させると考えるかもしれません。また、それがない場合は、アメリカの子会社の親会社からの仕入れが異常に高いために、利益が出ないという言い方もできるわけです。
移転価格税制では正常な価格のことを、独立企業間価格(arm's length price)と言います。実は、コスト比較がなかなか容易でありません。即ち、アメリカ向けの商品と第三国向けの商品スペックが異なることが多いので、一般には高くなりますし、数量も少ない場合、コスト的に高くなっていることもあります。また、為替が変動することにより、変動部分が市場に転嫁できればわかり易いのですが、急激に上下するような為替局面で、変動部分をそのまま価格に反映することができないのが現実です。
独立企業間価格を算定する方法としては、以下の方法が認められています。
@比較可能非関連者間価格法
A再販売価格法
B原価加算法
C上記以外の合理的な方法(利益比準法等)
現実的には、IRSのやり方はアメリカの同じ業界の平均的コストデータをベースに適用するなど、どこまで合理性のある主張であるか疑問も残ります。アメリカの税務当局から見た場合は、事業が利益を出せずに継続していることは自然ではないということになります。アメリカの社会に企業として存在して、アメリカの社会資本を利用し、経済活動を行いながら、税金を払わないのはいかがなものかということです。また、IRSの調査に対して反対を唱えることはできるのですが、合理的な説明を行う責任が会社側に求められます。この対応で、長期にわたり時間が費やされることになるので、争う場合の時間的なコストも考えなくてはいけません。
移転価格税制の適用を受けると、国際的な二重課税が発生してしまいます。米国の法人が連邦所得税を納税し、日本法人が納付した日本の法人税の対応部分の還付を受けることになります。
移転価格税制による事業上のリスクをあらかじめ回避するために、取引を行う法人があらかじめ課税当局との間で取引価格について事前に協議をするAPAがあります。
価格は企業の最も重要な戦略ですが、ことアメリカでの事業を行う場合に、安ければダンピングになり、高ければ移転価格になる可能性があるので、その間にあって適正な水準であることが求められます。
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