個人の居住形態の判定



アメリカで仕事をすることによる所得税を考える場合、まず初めに、居住の形態を特定することになります。それは、居住の形態によって課税される所得の範囲や課税の方法が異なるからです。

税務上の居住地を決めることは大変重要なことで、これは国ごとに決められています。アメリカはアメリカの定義を持ち、日本は日本の定義を持ちそれぞれの基準により居住・非居住を決定します。その上で所得税法により課税される所得の範囲を確定し、税額を計算することになります。

また、注意を要することは、所得税においての判定と遺産税・贈与税では判定基準が違います。所得税で居住者であっても遺産税・贈与税では非居住者ということもあるわけです。

日本の税金を考える場合は、日本の所得税法の規定により判断し、アメリカの税務を考える場合はアメリカの所得税法で考えることになります。しかしながら両国の税金はそれぞれ独立して動きますので、場合により、一つの所得に対して両国で課税が発生してしまいます。その場合に外国税額控除が、この二重課税を排除するために機能します。

まずはじめに、日本の所得税法の規定を見ると次の通りです。

居住者と非居住者の区分:[平成18年4月1日現在法令等]

我が国の所得税法では、「居住者」とは、国内に「住所」があり、または、現在まで引き続いて1年以上「居所」がある個人をいい、「居住者」以外の個人を「非居住者」といいます。
 「住所」は、「個人の生活の本拠」をいい、「生活の本拠」かどうかは「客観的事実によって判定する。」ことになっています。
 したがって、その人の生活がそこを中心に営まれている場所かどうかで住所が決まります。
 ある人の滞在地が2か国以上にわたる場合に、その住所がどこにあるかを判定するためには、職務内容や契約等を基に「住所の推定」を行うことになります。
 「居所」は、「その人の生活の本拠ではないが、その人が現実に居住している場所」とされています。
 法人については、本店所在地主義により、内国法人又は外国法人の判定が行われます。
 租税条約では、わが国と異なる規定を置いている国との二重課税を防止するため、個人、法人を含めた居住者の判定方法を定めています。
 具体的には、それぞれの租税条約によらなければなりませんが、一般的には、次の順序で居住者かどうかを判定します。
 個人については、「恒久的住居」、「利害関係の中心的場所」、「常用の住居」そして「国籍」の順に考えて、どちらの国の「居住者」とみられるかを決めます。
 法人については、相手国が管理支配地主義を採用している場合には、本店所在地主義と競合することになり、双方居住者の問題が生じますが、その場合には、その法人を実質的に管理する場所のある国の「居住者」とみなすことになります。

(所法2、3、162、所令14〜15、所基通2−1、3−3、OECDモデル条約4)

【日本:居住者とは】

居住者とは、国内に住所を有し、又は現在まで引き続いて1年以上居所を有する個人をいいます。(所得税法第2条@三)

日本の基準
居住者 国内に住所を有しているか、または現在まで継続して1年以上国内に居所を有する個人
非永住者 居住者のうち、日本の国籍を有しておらず、かつ、過去十年以内において国内に住所又は居所を有していた期間の合計が五年以下である個人をいう。
非居住者 非居住者とは、居住者以外の者をいい、次のいずれかに該当する者

国内に住所及び居所を有しない者
国内に住所を有せず、かつ、居所を有する期間が、現在まで引き続いて1年末満である者


平成18年7月4日の「所得税基本通達の制定について」の一部改正について(法令解釈通達) では次のように定義されています。
入国後1年を経過する日まで住所を有しない場合
入国後1年を経過する日までの間は非居住者、1年を経過する日の翌日以降は居住者
入国直後には住所がなく、入国後1年を経過する日までの間に住所を有することになった場合
住所を有することとなった日の前日までの間は非居住者、住所を有することとなった日以後は居住者
日本の国籍を有していない居住者で、過去10年以内において国内に住所または居所を有していた期間の合計が5年を超える場合
5年以内の日までは非居住者、その翌日以後は非永住者の居住者



居住の形態とは、その人がどこに住所等を有しているのかということです。私たちはアメリカに赴任すると、通常は住所が日本からアメリカへ移るので、日本には住所がないということになります。

アメリカの勤務が1年を超える場合は出国後、日本の非居住者となりますが、1年未満の場合は出国後であっても日本の居住者です。



アメリカの判定基準
(個人所得税)

アメリカにおいて、個人所得税で居住者・非居住者の判定を行う場合、@グリーンカードテストA実質滞在テストで判定していくことになります。 グリーンカードテストまたは、実質滞在テストのうち、どちらかに該当すれば、税法上は居住者として扱われます。

@グリーンカードテスト

これは、きわめてわかりやすく、グリーンカードを持っていれば、アメリカ税務上はアメリカ市民となんら変ることがありません。他のテストをするまでもなく、居住区分上はアメリカの居住者です。このグリーンカードを持っている方で、日本に住んでいる方がおりますが、アメリカの税務申告の対象です。
    
A実質滞在テスト

こちらは少し複雑ですが、次のような判定に、同時に該当すれば居住者としてみなされます。
i)当年に少なくとも31日以上、アメリカに居住している。
ii)過去3年のアメリカ滞在日数が183日以上である。この183日の算出は次によります。
      当年の滞在日数+1年前の滞在日数×1/3+2年前の滞在日数×1/6≧183日
この場合、フルに24時間ではなくどんなに短くても、滞在は1日になります。トランジットでアメリカにいた場合は除外するとか、小数点以下の扱いなど、ギリギリのところで問題になる場合は、詳細の検討が必要です。



実質滞在テスト−除外日

実質滞在テストから除外できる日があります。病気でアメリカを出たくても出られなかった日、カナダ・メキシコに住んでいて、アメリカに通勤している人の場合の日数、トランジットで仕事をせずに、アメリカにいただけの日、船員として一時的にアメリカにいた場合などです。

居住者としていつから扱われるか

グリーンカードを取得した場合、その年の1月1日から居住者になります。実質滞在基準の場合、例えば、ある人が2005年4月1日から滞在したとして、10月1日で183日になった場合、滞在開始日の4月1日から税法上居住者になります。どちらも該当の場合は、いずれか早い方をとります。

 



“F”“J”“M”“Q”ビザを持つ教授・学生などの例外

さて、アメリカの基準で、上記の原則に合わない場合があります。その代表的な例が”A(外交官)”、“F(学生)”、“J(教授・交換留学生)”、“M(専門学校学生)”“Q(国際交流プログラム研究者)”、”P(プロスポーツ選手)”ビザを持っている人です。こうした人は、Form8843を用いることで特別ルールが適用になり、滞在日が実質滞在テストから除外され、滞在日数が183日を超えても非居住者となります。

ただし、J・Qビザの教授や交換留学生、研究者だった人は、前6暦年のうち、2暦年除外され手非居住者になっていた場合、滞在日を除外できません。過去6暦年のうちの4暦年、外国の雇用主からだけ給与を支給されている“F”“J”“Q”ビザの人も、それ以上は除外できません。

F, J, M, Q ビザの学生 の場合は、フォーム8843 を提出する(提出義務があります)ことによって、5暦年までこの扱いです。

また、ビザの条件に合わないようなことをしている場合、資格喪失になることがあります。IRSはその人がビザの条件に合致しているかどうかチェックできるので、不法就労にならないように気をつけることが必要です。



二重居住と双方居住者

二重居住者

日本からアメリカに駐在する年度と、駐在を終えて日本に帰国する年度が二重居住者になります。即ち、1年のうちに居住者(非居住者)である期間と非居住者(居住者)である期間が並存します。入国日がその年度の前半であれば居住者です。後半の場合は、前年に居住者でなければ、非居住者となります。その場合でも、赴任日以降に次の条件を満たせば居住者と認められます。

 (1)入国年度中に連続31日以上滞在した。
 (2)アメリカ滞在の初日から、12月31日までの合計日数が75%以上。 
 (3)入国の翌年に183日以上の条件を満たして居住者となる。

帰国の年は原則として帰国日までが居住者、それ以降が非居住者となります。

双方居住者

日本の居住者が、税法上もアメリカの居住者である場合は、双方居住者(Dual Resident)となります。 日本の会社に籍を置いたまま出張の形で日本とアメリカを往復して、年間のアメリカ滞在日数が合計で183日を超えるという場合です。

日本の居住者でありながら、アメリカの税法で双方居住者と見なされる場合、日米租税条約により、より密接にかかわりがある方の国の居住者となります。

何をもって、判定するかですが、次のような基準です。
・恒久的な住居がどこにあるか。
・家族がどこに住んでいるか
・個人の財産、クルマや家財道具や衣服などがどこにあるか
・社会的、政治的、文化的、宗教的なかかわりがどこにあるか
・事業や仕事がどこでなされているか。
・運転免許証はどこのものか。
・参政権をどこで行使しているか。
・その他

日米共に「常用の住居」があり、判定ができない場合は、本人の国籍のある国の居住者します。また、それでも日米両国の二重国籍者、またはどちらの国の国籍も有しない場合は、日米両国の税務当局間の協議で、どちら国の居住者か決定します。

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